・関節リウマチ 

 

●関節リウマチとはどんな病気?

関節リウマチは、免疫の異常によって関節の内側を覆っている滑膜に炎症を起こし、関節が腫れたり、痛みを起こす病気です。進行すると軟骨や骨が破壊されてしまい、関節の機能が損なわれ日常生活に支障をきたすことになります。

全国で70万人以上の患者さんがいると言われ、30~50歳代の女性に多く発症するのが特徴です。

 

関節リウマチの原因は、まだ完全には解っていませんが、遺伝による体質にウィルス等の刺激が加わり、免疫システムに異常を起こすことによって発症すると考えられています。


このような病気は自己免疫性疾患と呼ばれ、関節リウマチの場合は自分自身の滑膜を外敵と誤って攻撃するために炎症が起こると考えられています。(画像1)


[ 関節リウマチの症状は? ]
初期に見られる症状は、朝目覚めたときに両手指の関節がこわばって動かしにくくなる「朝の手指のこわばり」や関節の腫れ、痛みです。
このような関節の症状は全身の複数の関節(多発性)や、左右両方の関節(対称性)に起こることが特徴で、特に手首、手の指や足の指に多く認められます。また進行するにしたがって関節に変形を起こします。


手の指の付け根の関節から親指以外の指が外を向く尺側偏位、指ではスワンネック変形やボタン穴変形(画像2)、足の指では外反母趾や槌趾変形(画像3)が多くみられる変形です。


関節リウマチの症状は関節だけでなく、発熱、疲れやすい、食欲がない等の全身症状を伴うこともあります。
間質性肺炎はよく見られる合併症で、息切れや咳、呼吸が苦しくなったりします。
関節リウマチでは貧血を伴うことがよくあります。鉄は体全体に酸素を運ぶヘモグロビンの重要な成分の一つですが、慢性炎症が血液を作るために必要な鉄分の利用を妨げるからです。
骨粗鬆症も重大な合併症の一つです。関節リウマチが女性に多いことや、炎症を起こす原因のサイトカインという物質が骨を破壊する細胞を活性化して、関節近くの骨をもろくしていきます。

病院の治療で使用されるステロイド剤も骨粗鬆症の原因となります。さらに進行した患者さんでは痛みのため体を動かすことが困難となり、次第に全身の骨密度が低下することになります。


[ 関節リウマチが心配な時はどうしたらいいの? ]
手首や指等の関節に痛みや、腫れがあったり、朝起きた時に手がこわばったりする時にはまず、専門科を受診してください。
関節が痛む病気は他にも数多くありますし、関節リウマチであったとしても発病の初期には診断が確定しないことも少なくありません。
しかし、関節リウマチは、早い時期に発見し、病気が進行しないうちに治療を開始することが重要です。最近では患者さんが関節の変形を残さず、治療の必要がなくなる状態(寛解)にすることが可能となりました。たいしたことはない等と自己判断せず、関節に起こった初期のシグナルを見逃さないことが重要です。


[ 病院ではどんな検査をするの? ]

( 問診 )
一般の病気と同じように問診から始めます。いつから症状が起こったのか、他に内科的な症状は無いか、家族の方の病気等について聞かれます。関節リウマチは遺伝する病気ではありませんが、家族の方に関節リウマチや自己免疫性疾患(膠原病)の患者さんがいる場合は発症する確率が一般の人に比べ高いことが解っています。

 

( 画像検査)
腫れたり痛みを起こしている関節のレントゲン写真をとります。リウマチの特徴は関節の近くの骨が浸食している像ですが、初期にはあまり変化が見られません。最近では早期に診断し治療を開始するため、超音波装置を用います。レントゲンではリウマチかどうかわからない時期でも、超音波で診断を確定することが出来るようになったからです。
MRIもレントゲン写真で写らない滑膜、軟骨、骨髄等の異常を見つけることができますが、検査に時間と費用がかかることが欠点です。

 

( 血液検査 )
血液検査はリウマチの診断に重要です。関節リウマチの疑いがある患者さんには、自己抗体(自分の体の組織に対する抗体)であるリウマトイド因子を検査します。リウマトイド因子は診断基準の項目の一つですが、他の膠原病でも陽性になったり、健康な人でも陽性になることもあります。そこで最近では抗CCP抗体という抗体を検査します。これは他の疾患で陽性になることがほとんどないので関節リウマチの診断に有用な検査です。特殊な検査ではないので採血をするだけでわかり、保険も適応されます。これらの自己抗体は病気を確定したり、他の病気と鑑別するための検査ですが、その他にも血液検査によって、患者さんの体に起こる様々な情報を得ることができます。
関節リウマチは滑膜に炎症を起こす病気なので、炎症の程度を知ることは、病状の進行や使用している薬の効果、治療の判定に重要です。
炎症の指標として赤沈、CRPを測ります。MMP-3は関節滑膜の増殖をとらえる指標です。リウマチ患者で高値を示す場合は関節破壊の進行が早いことが予想されます。
 その他に肝臓や腎臓の機能を反映する生化学検査、血液中の血球成分(白血球、赤血球、血小板)の数を調べる血液一般検査等があります。これらは関節リウマチの活動性や内臓の異常、薬の副作用を知る為に定期的に調べる必要があります。


[ 関節リウマチと診断されたらどんな治療があるの? ]

 関節リウマチでは主に3つの治療法があり、それぞれの治療について簡単に説明します。

 

( 薬物治療 )
最近関節リウマチの治療が大きく変わってきました。10年以上前には主な症状である関節炎を抑える目的に消炎鎮痛剤の投与が初期治療の主体でした。その後抗リウマチ薬(免疫の異常を改善してリウマチの進行を抑える薬)が開発されてからも、症状の進行に伴い弱い薬から徐々に強力な薬に変更したり、併用したりしていた時期が続きました。1999年にメトトレキサート(商品名リウマトレックス)という抗リウマチ薬が日本で認可されました。それまでの抗リウマチ薬は効く人と効かない人がいたり、効果がでるまでに時間がかかったり、良く効いていた薬でも効かなくなってくる等の問題がありましたが、メトトレキサートはこれらの欠点が少なく、現在ではリウマチの中心的な薬剤として、欧米を中心に世界中で使用されています。

一方、副作用も注意が必要です。口内炎、胃腸障害、肝機能障害など軽症のものは薬を中止し、葉酸を飲むことで防げますが、白血球や赤血球を作ることが抑制される骨髄障害や、間質性肺炎を併発するようなこともあります。

しかし、このような重症の副作用も医師と患者さんが協力し、注意しながら治療をおこなっていけば未然に防ぐことは可能です。
さらにリウマチの患者さんにとっての朗報は、2003年より次々に認可され使用出来るようになった生物学的製剤の登場です。この薬の特徴は炎症を引き起こすサイトカインという物質の働きを抑えて、関節の炎症や、骨・軟骨の破壊を防ぐ作用があります。かつてリウマチは治らない病気で、一生薬を飲み続けなければならないと考えられていましたが、生物学的製剤を使って治療を開始した人の中には、関節の痛みや腫れ、炎症等がなくなり薬を使わなくとも痛みや関節の腫れから解放される患者さんもいます。
生物学的製剤は免疫の働きを抑える為、肺炎や結核等の感染症に注意が必要です。


( 手術療法 )
リウマチの治療の中心は薬物療法ですが、薬の投与で関節の炎症が治まらなかったり、病気が進行して関節が破壊され、日常生活に支障をきたすような場合は手術を考えなければなりません。

手術には大きく3つの種類があります。
1. 滑膜切除術は炎症を起こしている滑膜を取り除く手術です。最近は内視鏡で行われることが多く、傷も小さく、回復が早いというメリットがありますが、関節破壊が進んで、軟骨が残っていない人には行えません。また滑膜切除術の効果は2~3年と言われており再発することもあります。
2. 人工関節置換術は、壊れた関節を新しく人工の関節に取り替える手術です。膝や股関節の関節破壊が進み、歩行が困難になった人には関節が滑らかに動くようになり、痛みから解放されます。行動範囲も広がり、精神的にも明るくなることが何よりも患者さんにとって重要なポイントと言えるでしょう。
3. 関節固定術は、関節の骨どうしをくっつけて痛みをとる手術です。固定されることによって関節は動かなくなりますが、確実に痛みがとれるメリットがあります。主に足関節、頸椎、手関節に行います。


(リハビリテーション)
関節に痛みがあるとどうしても体を動かさなくなります。徐々に関節の動きが悪くなり、筋力が低下し、日常生活にも不自由になっていきます。こうしたことを防ぐ為にはリハビリを行うことが有用です。

リハビリも大きく4つの方法があります。

1. 物理療法は運動前に関節を温めることによって血流を良くし、痛みを和らげてからリハビリを行う治療です。超音波、レーザー、ホットパック等があります。
2. 運動療法は筋力を維持・強化し、関節の動きを改善させるもので、特に手術後では積極的に行いますが、変形が進行した関節に可動域を得ようとして無理な運動をすることはかえって症状を助長してしまい逆効果です。
3. 日常生活の具体的な動きに対して行うリハビリは作業療法と言います。主に手や指の機能を回復する為、絵画や書道等を行うもので、患者さんが自ら興味のあることを進んで行うことで、楽しみながらリハビリを進めていくのがコツです。
4. 装具療法は関節の負担を軽くし、変形を予防・矯正する為のもので、簡単なサポーターから患者さんのサイズに合うように型をとって作るものもあります。


治らないと言われてきた関節リウマチの治療が変わってきました。早期に診断して早期に治療を始められれば、多くの患者さんで進行を防ぐことが可能です。薬物療法や手術療法も進歩しており、関節リウマチと診断されたからといって決して悲観することはありません。一人で悩まずに気軽に先生に相談なさることが大切です。

 

 

「な」「お」「す」 これは、リウマチについて悩んでいる方の標語だそうです。

それは、リウマチを
 「な」
なやまない
 「お」 おそれない
 「す」 すすませない
という意味で「な、お、す」です。

「な」 例えば炎症を抑え、痛みをとるホルモンであるステロイドは、一方、ストレス、ショックに対するホルモンでもあります。従ってリウマチであることを悩んでしまうと、このホルモンが使われてしまい、リウマチの炎症を抑えることができなくなってしまう。つまり損をしてしまうのです。リウマチの患者さんは、月に1度の診察に1時間、毎日の内服が2分の計2時間だけリウマチのことを意識し、残りは御自分の人生を謳歌してください。
「お」 早期診断・治療をすることで、寛解、つまり治るようになりました。“おそれている” 時間、もったいないのです。
「す」 革新的進歩を遂げた薬物療法に手術・理学療法を専門的なチームとして集約的に組み合わせることで、あなたの関節はもうこれ以上悪くならないのです。 一緒にリウマチを“なおす”のです!!

ある患者さんがこんなような主旨のことを言われました。
「がんばるだけが本当に大切なのだろうか?」
リウマチの特徴的な症状に朝のこわばりがあります。同様に長く座っていた後立ち上がりにくいという症状も。 今まで、そういう訴えに対してなんと応えていたかな? がんばりましょう? よくなりますよ? もう少し我慢してみましょう?・・・・・・
もしかしたら「がんばらなくていいんですよ!」がその答えなのかもしれません。
リウマチという病気に対するリテラシー(知識・教養)を高めることで、患者さんやそのご家族だけでなく周りの人々、医師など医療関係者も含めた社会全体がフレックスタイム制度のように、朝早くから「がんばらなくてもよくなる」ことがこの治療のガンバる目標なのかもしれません。

これは、ある先生がお書きになられたものの一部ですが、この考え方は、すべての病気に対して言えることです。

 

関節リウマチと糖尿病

 

 近年すます患者さんの数が増加している病気が糖尿病でで、関節リウマチ以上にありふれた病気の一つです。
糖尿病全般の簡単な説明と関節リウマチ治療との関連について少しお話させていただきます。

血液のなかにあるブドウ糖は、すい臓から出るインスリンというホルモンによって細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。しかし、さまざまな原因によってインスリンの出が悪くなったり、インスリンの働きが鈍くなったりすると、ブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなります。
その結果、エネルギーとして利用されなかったブドウ糖が血液のなかにたまり、血糖値が高くなっていきます。


血糖値が高い状態(高血糖)が持続する病気が糖尿病です。
 

正常→高血糖→糖尿病は
主に、若年で発症することが多い1型糖尿病と、成人で発症することが多い2型糖尿病に分けられます。


1型糖尿病 は、すい臓からインスリンがほとんど出ないタイプです。ですから、治療するためにはインスリンを注射で補う必要があります。

2型糖尿病
は、インスリンの出が悪いか、うまく働かないタイプです。
治療はまず食事・運動療法を行い、それでも血糖値が下がらなければ薬物療法を行います。


日本では,全糖尿病の約95%が2型糖尿病です。
糖尿病の発症には、遺伝的な要素が大きくかかわっています。
ご家族や親戚に糖尿病の方がいる場合、自分も糖尿病になる可能性が高くなります。
さらに、食べすぎ・飲みすぎ、肥満、運動不足、加齢、ストレス、妊娠などさまざまな誘因が加わって糖尿病になるのです。
糖尿病の診断には血糖値の測定が重要です。血糖値としては、空腹時や随時血糖値のほか、経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間値が診断に用いられます。

早期(軽症)の糖尿病のうちは、まったく自覚症状がありません。
ある程度糖尿病が進行すると、

のどが渇きやすい、トイレが近くなる、ご飯を食べてもおなかが減る、疲れやすい などの症状が現われます。
 

症状から早期発見することが難しいため、早めにきちんとした糖尿病の検査を受け、適切な治療を行うことが大切です。

糖尿病を放置すると、失明の原因となる
糖尿病網膜症や人工透析の原因となる糖尿病性腎症、手や足がしびれる糖尿病性神経障害など、さまざまな合併症を引き起こします。

関節リウマチと糖尿病の発症には直接の関連性はありません。
しかし、関節リウマチの治療で用いられる薬の中には血糖値への影響があるものがあります。
中でもステロイド剤は少なからず血糖値を上昇させる作用をもっています。ステロイドは、元々体の中で合成されるホルモンの一つで、健常人ではプレドニンに換算して5mg=錠程度が一日で分泌されています。
本来ステロイドホルモンは、しばらく食事が取れないような状況にあっても血糖値を下げないように、肝臓にブドウ糖を作らせる作用を持っています。このため、ステロイドホルモンが過剰となると、 血糖値は必要以上に上昇しやすくなり、糖尿病の発症や増悪につながることになります。
特にプレドニンで3錠(15mg)以上を内服していると、ステロイドによる糖尿病を起こしやすくなります。
これより少ない場合でも長期に渡るステロイドの使用は糖尿病の発症や増悪につながる場合があり、 注意が必要です。


治療に関しては食事、運動、薬物治療、ステロイドの減量を総合的に行う必要があります。

糖尿病もリウマチと同じく簡単に完治することのできる病気ではありませんが、自己管理と定期受診を行うことでほとんど病気を悪化させずに付き合って行くことのできる病気です。
特に肥満があるような場合には減量により完治することも多々経験されます。
くれぐれも放置することのないようにお願いします。